悩みを抱える子どもたちに大人ができること

子どもたちや周りの大人に向けてお伝えしたいことを、センター長の長谷川がインタビューで話させていただきました。
大切なことを詰め込んだメモをこちらでも共有させていただきます。
子どもたちのSOSに、少しでも早く気づき、対応するために何ができるでしょうか?
もちろん大人のSOSも大事です。
異変に気づいたら抱え込まず、相談されてくださいね。
相談することはとても勇気のいることですが、一歩踏み出せますように。
以下、メモの引用です。ご一読いただけますと幸いです。

Q  悩みを抱える子どもたちはどんな不安を覚えているのでしょうか?

A 休み前の学校での辛い体験の記憶が自動的に喚起される・再体験への恐怖心が高まる
 慢性的な空虚感、自分の存在意義へ疑問と見えない未来への不安
 → こちらは家庭環境が源泉であることも
 ぐるぐると考えてしまう思考優位な特性(生まれつきの脳機能)を持つ子どもは特に苦しい
 → 視野狭窄状態(客観的・合理的に考えられない)に陥るリスク

Q 夏休み明け親など周りの大人が気をつけるべきことはありますか?

A 自殺多発の特異日でもあり、子どものライフスパンにおけるターニングポイントになりやすい
 ・「適度」な心理的距離を保ち子どもに眼差しを向けること
 というのも、「適度」が保たれていない家庭が増えている
 過剰に侵入的な介入と、その対極である無関心・疎遠は避ける
 ・子どものサインは暗喩的で、親に何かを指し示す大切なものであると捉えること
 そのためには、対世間的な評価・価値観を弱めることが大切になる
 家族関係(夫婦等)に問題があれば、それを軽くする試みは必須

Q 不安を抱えている子どもたちが出す、注意すべきサインはありますか?(どんな特徴を読み取り、大人は子どもの不調を判断すべきか)

A 大別して身体不調とネガティブ思考が行動化したもの
 ・前者はすぐに把握可能
 ―腹痛・頭痛等身体の痛み、頻尿や過敏性腸炎、不眠・過眠、食欲の亢進や減退、発汗・動悸・息切れ、顔面蒼白
 ・後者は見逃されることもある
 ―溜息が増える、口数が減る、反復行動が増える、自傷的行動、イライラして言葉がきつくなる、フリーズして動かないとか喋れないという状態になると視野狭窄が深刻なサイン(パニック)
 ・さらに何も出さないというサインも重大
 ―何事もないように普通に過ごしているが、実際はサインも出せない程コントロールされている
 この場合、のちにそのツケが回ってくることもある
 ※もちろんすべての子どもがそうだという訳ではない

Q 年齢によってその特徴に違いはありますか(小学校~高校、大学)?

A 小学中学年頃までは身体不調として表れやすい 小学高学年~中学生では負の思考に囚われやすい
 上記差異は子どもの認知発達に依存している
 身体的不調の場合は病院へ連れて行くなどして親も心配になり対応しようとする
 思考で苦しんでいる場合は「気持ちの問題」「甘えないように」と、つい「頑張ればなんとかなる」という趣旨の言葉がけに走りがち

Q 子どもの異変を感じ取ったとき、親がすべき対応は?(望ましい行動は、絶対にやってはいけないことは)

A 何かに気づいたら放置はしない
  第一に、気にかけていることを示す受容的な言葉がけを行う
 「しんどそうだけど……」
 「無理しないでね……」
 「どんなことでも聴くよ」など
※過去に否定的なしつけが多かった場合は、これらの言葉に子どもは疑念を抱きやすい
  → 親が専門家に相談する
(明らかに身体的な不調でなければ医療機関ではないほうがよい・早期投薬で終わってしまう懸念)
 「大丈夫?」との問いかけは不毛に終わることが多い。「大丈夫だ」との返事を誘導しやすい

Q 子どもたち本人に先生が伝えたいことはありますか?

A 「自信がなかったり自己嫌悪に陥ったりしている君は、まずそれが自分自身でなろうとしてなったものではないという事実を知ってほしい」
 「世の中には子どもの想いを踏みにじる大人が多いかもしれないけれど、そうではない人も必ずいる。見つけ、出会えることを願っている」
 「君には、らくになり、楽しみを感じながら生きる権利がある。それは義務より先にあるものだ。それを知らない君に、是非知ってほしい」
 「今がどんなに苦しくても、命が繋がってさえいれば、未来が変わっている可能性が残るんだよ」

Q 親など周りの大人が子どもたちに伝えてほしいことはありますか?(日常的にも、夏休み明けのこの時期特有のこともありましたら)

A 伝える前に、まず自分たちの子ども時代の苦しみを思い起こしてみてほしい。
 そうでないと、子どもの目線に立って物事を見たり、判断したりすることができない。
 その上で「〇〇くんがいてくれることが嬉しい」「どんな〇〇でも大切な存在だ」と、無条件に肯定する心からのメッセージを届ける
 子どもが何か示してくれたら、「わかったよ」「教えてくれてありがとう」と言い、伝わっていることを知らせる

Q 昔と比べ、現在の子どもたちを取り巻く環境に先生は変化を感じていますか?

A 少子時代の影響はかなり大きく子ども一人当たりの大人の数が昭和初期の3倍近くになった。
 → 親世代も自分の子ども時代のしつけの後遺症を負っている(連鎖現象)
 それに加え、家庭教育、学校教育、地域教育に力が注がれるようになった。
 子どもは否応なく、大人たちに監視され、少々の問題でも正される状況に置かれている。
 子どもの世界(子どもが人の目を気にしないで自由に伸び伸びと過ごす時間と空間)が激減
 「多様性」を謳いながら、子育てにおいては「普通」や「将来のため」とレールが敷かれている矛盾
 近年は先天的な「特性」への研究が盛んであり、その観点から子どもはみんな違うこと、対応も変わってくることを理解すべき

以上です。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
ひとりでも多くの方のお役に立てることを願っています。